コラム

No.30 昨年中の火災・救急の状況について(東京都内)

 令和2年を迎えたばかりですが、東京都内をはじめ全国各地で火災のニュースが報じられており、火災により亡くなる方も増加傾向にあります。例年より暖かな日が続き大気の乾燥状態が火災の延焼拡大要因の一つとも思われます。


 先般、東京消防庁から昨年(平成31年・令和元年)一年間の火災及び救急状況について速報値が公表されました。火災件数は4,084件で一昨年に比べ111件の増加となりました。また、火災による死者は108人となり、この数値も一昨年より22人増えております。特に住宅火災での死者が83人(内53人が高齢者)発生し、火災による死者全体の76%余りを占めています。


 住宅火災の原因の第一位は例年通り「たばこ」となっており、特に「寝たばこ」では住宅用火災警報器が作動したものの気付くのが遅れ、避難に支障を来した事例などもあるところです。改めて一般住宅における喫煙管理について注意をしていただきたいと思います。


 なお、住宅用火災警報器につきましては一般住宅への設置が法令及び条例で義務付けられておりますが、作動状況についても時折気を配ることが必要です。特に10年を経過してしまったものにつきましては、電池の経年劣化などにより正しく作動しない場合がありますので、速やかな本体の交換をお勧めします。


 次に救急の状況ですが、都内での昨年一年間の救急件数は825,933件で一昨年に比べ7,871件の増加となり、10年連続で過去最多件数を更新しました。社会の高齢化現象に伴いお年寄りの傷病者が自ずと増えています(昨年救急搬送された方の39,1%が75歳以上)が、傷病者の全体を通して搬送先の病院で軽症(入院の必要がないもの)と判断された事例は54,2%となっています。住民の皆様が緊急と思われる事態に臨み、119番通報をすることはやむを得ませんが、状況によっては救急要請の前に♯7119(東京消防庁救急相談センター)への相談、問合せなどが可能であることも心に留めておいて欲しいところです。東京消防庁では東京、新宿駅など都内主要駅周辺への「救急機動部隊」の配置や毎年度救急車の増強に努めているとのことですが、皆様にも救急車の適正な利用についてご理解いただければと思います。


 最後に、昨年中の八王子消防署管内の火災及び救急の状況ですが、火災は159件で一昨年より11件増加し、火災による死者は5人(内1人は消防署員の殉職)で、残念ながら一昨年より4人増えています。また、救急件数は28,049件で一昨年より214件の減少となりました。


 いよいよ本年は東京オリンピック・パラリンピック大会開催の年となりますが、世の中想定外の事故や災害が起こることも考えられます。七国四丁目自主防災会会員の皆様には前年に引き続いて、防災訓練や応急救護訓練への参加をはじめ、各ご家庭においても地震や火災予防対策などをより具体的に進めていただき、地域全体の「防災行動力」が年々向上していくことを大いに期待しております。

七国四丁目自主防災会・アドバイザー 秋山 惠(東京消防庁OB・消防大学校客員教授)