今回は、昨年1年間における東京都内(東京消防庁管内)の火災と救急活動の状況についてお伝えしたいと思います。
まず、火災の状況ですが出火件数は3,970件、一昨年に比べ235件の減少となりました。しかしながら、自損を除いた火災による死者は75人で10人の増加となり、このうち高齢者は53人(全体の約70%)でした。高齢者の死者の割合は最近5年間のうち2番目に高い比率となりました。また、火災により負傷された方は798人で前年より40人の増加となっています。ちなみに、八王子消防署管内の火災は148件、死者は1人でしたが、本年は7月18日現在、既に火災が100件(昨年同期より4件増)、焼損床面積は857㎡(昨年同期より395㎡増)、火災による死者は4人発生しています。
なお、火災原因については、①放火、②たばこ、③ガスコンロの順で例年と変わりないようです。引き続き、放火されない環境づくり、たばこの吸い殻の確実な処理、台所の火災予防などに注意していただくとともに、「人間はミスをするもの」と自覚して、初期消火のための家庭用消火器の設置や住宅用火災警報器のチェック、就寝前の火の元の確認なども心がけてもらいたいと思います。
続いて救急活動の状況ですが、救急出場は818,100件(八王子消防署管内は28,263件)となり、東京で救急業務を開始した昭和11年(1936年)以来、初めて80万件を突破して過去最多となりました。これは約39秒に1回救急車が出場したことになり、ここ9年間連続で増加している現状です。また、昨年救急搬送された方の約40%が75歳以上の高齢者層というまさに高齢化社会の実態を示しています。なお、昨年は全搬送人員の約55%の方が病院において入院する必要がない軽症と診断されていることも事実ですので、救急車を呼んでいいものかどうか迷った際には『東京消防庁救急相談センター』(電話・♯7119)や『東京版救急受診ガイド』(パソコン、スマホ用)を利用できることも知っておいていただきたいと思います。東京消防庁では毎年救急車の増強や現場到着時間の短縮対策などを進めていますが、さらなる救命率の向上のためには、AEDの操作方法も含めた救命講習や地域の防災訓練への参加など、住民の皆さんの積極的な活動が大切であることをご理解ください。
七国四丁目自主防災会・アドバイザー 秋山 惠
(東京消防庁OB・消防大学校客員教授)