コラム

No.4  防災の心 (2014.5.13)

いつもコラムでは偉そうなことを書いてきましたが、今回は誠に恥ずかしながら、私の最近の失敗談を記したいと思います。

 

5月初めの夕方、勤務先からの帰宅途上、JR八王子駅中央線ホームから横浜線への乗換え用階段に向かいました。周りの人達も横浜線、八高線への乗換えで急いで階段を駆け上がっていました。私もあまりゆっくりしていたのでは邪魔になるかなと考え、少し急いで昇り始めたのですが、その中段辺りで突然、足が段差に引っ掛かり、バランスを崩し階段に倒れ込んでしまいました(念のため申し上げますが、飲酒はしておりませんでした)。通勤用バックと紙袋を両手に持っていたことから、腕で身体を支えることができず、顔面を階段の角に強打したため、かなり出血し、結局鼻の下を4針縫う事態となりました。


倒れたまま顔を押さえたハンカチも血だらけ状態で、やっとの思いで立ち上がり、横浜線ホームまで流血しながらたどり着き、妻に連絡し八王子みなみ野駅まで車で迎えに来てもらいました。その後、八王子消防署へ連絡し緊急に診ていただける病院を教えてもらい、某救急病院のお世話になった次第です。


治療が済んで、心を落ち着けて思い返してみますと、階段での転倒時から横浜線で八王子みなみ野駅に到着し、妻の車に乗り込むまで、人通りの多い夕方であったにもかかわらず、起こそうと手を出してくれる人はいませんでしたし、周囲から声をかけてくれる人も全くおりませんでした。


近年、日本人は周りのことや他人のことには無関心、極力関わりたくない、巻き込まれたくない、といった風潮が強いようです。自分が怪我をしたことで、決して甘ったれたことを言っているわけではありませんが、本当にこんな世の中でいいのかなと、とても寂しい、情けない気持ちを抱いたところです。

 

私は37年間、東京消防庁において消防行政に携わってまいりました。地域の方々に、防災はまずは自助、すなわち、地震などの災害が発生した場合、まずは自分の身の安全は自分で守ることが大切である、などと話してきたにもかかわらず、自らの些細な不注意による受傷には恥じ入るばかりです。しかしながら、困難な事態に陥った人や自分の力だけで対応できない人たちには、周囲の助力、思いやりが何よりも肝要となります。防災自助であるとともに、弱い人たちに手を差し伸べる共助の姿勢が大切であり、共助の理念は周囲の人たちのお互いの思いやりの気持ちによって実現するものと考えます。


「自主防災会」が設立されて1年が経ちました。役員の皆さんは七国4丁目にお住まいの方々のため、一生懸命尽力されてきました。こうした活動を地域の総合力にまでレベルアップしていくには、「防災の根源はお互いを思いやる心」であるということを、いつも会員の皆さんの心にちょっとでも留めてもらえればと切に感じた痛い体験でした。 身の周りの危険にご注意を !


(自主防災会アドバイザー 秋山 惠)